メザシのユージ

生きる LIVINGのメザシのユージのレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.0
1953年、第2次世界大戦後のイギリス・ロンドン。役所の市民課に勤めるウィリアムズ(ビル・ナイ)は、毎日同じことを繰り返し、仕事に追われる自分の人生にむなしさを感じていた。ある日、医師からがんで余命半年であることを告げられる。最期が近いことを知った彼はこれまでの味気ない人生を見つめ直していく。
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黒澤明監督の『生きる』を、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの脚本でリメイク。ストーリーラインは黒澤明の「生きる」とほぼ同じ。ただ、147分ある「生きる」に比べて今作「生きるLiving」は103分とかなりテンポよくまとめられている。

黒澤明の「生きる」で、不幸は人間に真理を教えるという台詞がある。確かに不幸にはそんな一面があるかもしれない。漫然とただ何となく生きてきたウィリアムスが、自分が末期の癌であることに気付くまでは、役所に勤めてながらも何もしてこなかった。そんな彼が余命短いことを知り自分が残りの人生に目標を見つける。
孔子の言葉で「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」(朝、真理を聞くことができれば、その日の夕方に死んでも悔いはない。)というのがあるが、「生きるLiving」それを思い出した。
最期に自分がなすべき事を知って行動できた彼の人生は幸せだったと思う。

日本では癌の告知を本人にしないのに、イギリスではちゃんと本人に告げるとか、息子が日本では野球をやってたのに今回はクリケットとか黒澤明の「生きる」と見比べてわかる事も多い。「生きる」を見てからだとなお楽しめる。