ミスター・ゾンビが息を吹き返す話。
映像も脚本も端正。そのせいもあって、エモーショナルな盛り上がりには欠けるんだけど、途中から主人公のミスター・ウィリアムズを演じるビル・ナイの佇まいだけで、泣けてくる。
カチッとスーツをキメてジェントルマンを気取っても、仕事ではやってる感を出すだけで、周囲の人ともこころを通わすこともない。
そんな主人公に、生きることの楽しさを身をもって説く、避暑地に住む劇作家と、元部下のミス・ハリス。
しかし、主人公は長い間こころを閉ざして暮らしてきたため、彼らのように生きることは叶わない。
「どうすれば彼女のように生きられるんだろう」
代わりに見つけたのが、情熱を傾けられる仕事だったってのは哀しいけど、ミスター・ウィリアムズが満足できたんだから、それでいい。
考えてみれば、劇作家もミス・ハリスも、何かを求めて日々あがいている。それをまぶしく思うミスター・ウィリアムズ。浮かび上がってくるのはやはり「老い」がいかに残酷かということ。
こころは摩耗し何も感じなくなっていく。
それに気づいたミスター・ウィリアムズは生の実感を求めてあがき、彼なりの「人生の意味」を築く。
映像は実にきれいで、我が家で大ブームを巻き起こした、ソール・ライターの写真を彷彿とされる瞬間が多々あった。
脚本もよく練られてるんだけど、終盤の回想パートがちょっとまどろっこしいかったのが残念。
あと新人くん、いらんかったのと、ミスター・ウィリアムズがなんで嫌われているのかが伝わらず。小説ならよかったかもしれないけど、映画としては言葉足らず。
追伸
音楽もすばらしいんだけど、サントラにミスター・ウィリアムズの歌を収録してないのは大失策!! いますぐ、追加すべし。