滝井椎野

生きる LIVINGの滝井椎野のレビュー・感想・評価

生きる LIVING(2022年製作の映画)
4.3
生きるということは……。
人生の目的を見つめ直す本作、名優ビル・ナイの素晴らしい演技も相まって人生賛歌の傑作となっている。

黒澤明の原作から大幅に短くなっているにも関わらず、内容が薄くなるということは決してなく、黒澤版とはまた違った魅力があったように思う。
後世に伝えられるような大きな成果でなくても、誰かの為に何かを成す事の大切さと、その先に待つ確かな自己の満足と幸福を見事に描ききっていた。

自身の命が尽きようとも、その意志を継いでくれる者がいる限りその人は生き続ける。
本作のタイトルが『生きた』でなく『生きる』なのはそういうことなのだろう。
ビル・ナイの最後、雪の中ブランコを漕ぐ場面は最近観た映画の中でも屈指の美しさだった。
滝井椎野

滝井椎野