チェンバレン英首相がミュンヘン会談でヒトラーへの宥和政策を行ったことは、弱腰外交が後に大損害を引き起こした例として有名だ。英国人にとってはトラウマである。本作は宥和政策の〝恩恵〟を提示するフィクションだ。
ウクライナ戦争が泥沼化するなか、英国がウクライナを強力にサポートし、ロシアに対して最も強硬な姿勢をとる背景には、チェンバレンの宥和政策の失敗があることは間違いない。ナチ政権と同様の独裁国家ロシアには宥和政策よりもチャーチル政権のような強硬策が妥当と考えているのだろう。
ジョージ・マッケイは『1917』でもそうだが、ビビって目を白黒させるキョドった演技がめちゃくちゃうまい。歴史的事実の枠内でおさめなきゃならないので、歴史改変でヒトラーを〝無能力化〟することもできず、ああいうオチにせざるを得ない。
ドンパチする戦争映画ではないが、サスペンス映画として十分緊迫感を味わえた。