せっ

エンパイア・オブ・ライトのせっのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.2

80年代のイギリス郊外の海近くの映画館で働く過去のある事で心を病んだ女性ヒラリーが、大学に行く夢にやぶれた黒人青年スティーヴンと出会い心を癒していく話。

見ることと見ないこと、の話なのかなと思った。ヒラリーは、映画館で働いてるのに映画も見ないしニュースも見ない。クレーマーをそれとなくおだてて問題をうやむやに(これに関しては大人の対応ではあるけど)。彼女は徹底的に「見ない人」。それも、館長からの性的搾取を従業員も薄々気づいているのに見て見ぬふりをされ心のおかしい人と蓋をされてきたからなのかなと思った。

一方のスティーヴンは、「見る人」。最初、今では使ってない閉ざされたスクリーン4に入るきっかけとなるのも彼だし、映画も見るし、間違ったことや問題には向き合おうとする。それは恐らく、黒人であるが故に嫌でも世の中の情勢や歴史に向き合わなければいけなかったから。

どちらが良い悪いという話ではなくて、時には見ることも必要だし見ないことも必要で、見ない人だったヒラリーはニュースも映画も見るようになるし、大事なことからは逃げないようになる。でもヒラリーとスティーヴンの関係やヒラリーの失態は周囲の人から敢えて見ないようにされる。

これは映画と同じ。時には現実を忘れさせてくれる楽しい映画も必要だし、時には現実をしっかり見せることも必要。あとは映写技師のおっちゃんが言ってたように、フィルムは暗闇が挟まれてるけど人の脳はそれを都合よくそれを省いて見なかったことにする。人生には目を向けなくて良いこともあるし、向けるべきこともあるんだね。この手の映画最近?が残りまくる(『イニシェリン島』とか)けど今作はめっちゃ分かりやすかった、ありがてぇ。

それにしてもオリヴィア・コールマンが可愛すぎる。最初の完全に心を失った表情からの恋をしてパッと笑顔になる顔がもう可愛いのなんの。チャーミングという言葉良く似合う人だね。
せっ

せっ