ちこちゃん

エンパイア・オブ・ライトのちこちゃんのレビュー・感想・評価

エンパイア・オブ・ライト(2022年製作の映画)
4.0
「人生は心の在り方である」

いい言葉だと思います。
この映画は、人種、性差、年齢差、を題材に捉え、1980年代の海沿いの映画館での働く人々の人間関係にフォーカスをあてています。
その中心にオリヴィア•コールマン演ずる白人中年の女性であるヒラリーとマイケル•ウォード演ずる黒人青年スティーブンとの恋愛関係があります。

中年と若者、黒人と白人、女性と男性、この組み合わせは幾つかあるけれど、監督の意図する年齢、人種、性差の壁による非人道的な行いや搾取を描くためには、やはり白人中年女性と黒人青年という組み合わせが一番、課題を浮かび上がらせると考えたのだと思われます。

なぜ、スティーブンがヒラリーに惹かれるなか、という点は明確に描かれなかったので、そこは少しモヤる感じがしました。
ただ、スティーブンがヒラリーに恋したものの、ヒラリーの心の闇に踏み込むこととなり、それがスティーブンを人間として成長させることになります。ヒラリーもスティーブンと恋愛することで、孤独でセクハラ映画館長や自分の意見を発することがなく抑圧された状態から笑顔が増え、自分を取り戻す道を歩みはじめます。

そのようにこの映画は自分の人生を自分で取り戻すことがテーマであり、希望があり、将来があり、心温まる映画です。

兎に角、オリヴィア•コールマンの演技の素晴らしさは例えようもなく、ヒラリーを生きています。特にヒラリーを抑圧する全てのものに対する怒りを発するところが素晴らしいです。そして、共感できるのです。

そして、映画館!愛すべき空間が素晴らしいのです。海に面した映画館のドアを開けると、真っ直ぐレッドカーペットが伸びる階段、受付で売られているポップコーンの香りが画面からしそうです。
そんな映画館の画や、花火の画、新緑の公園の画、がとても美しく切り取られていて、画像も素晴らしいです。

映画館は、笑うときも、涙するときも、考えさせられるときも、モヤるときも、怖くなるときも、不安になるときも、いつもそこには居心地の良い居られる場所を提供してくれます。そんな、映画館への愛も存分に感じる映画です。

いろいろ評価が分かれる映画のようですが、私はとても温かい気持ちになれた映画でした。
それは、多分、この4月から新しい土地で新しい職場で生活をスタートする私の背中をこの映画が押してくれるように感じたかもしれません。

通い慣れた映画館ともお別れし、新しい映画館にまた出会うことになります。そんなウキウキしながらも少し別れ難さを感じながら、貸切の映画館で鑑賞しました

この映画と映画館に出会えて良かったです
ちこちゃん

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