ゆみゆみ

TAR/ターのゆみゆみのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.2
エンドロールの直前の映像が怖過ぎてもうびっくりしちゃって、怖怖怖怖って言いながら映画館を出た。

ケイトが撮了後もTARが自分の中から抜けていかずに苦しんでいるとインタビューで語ったようだ。もう仕事をしたくない、故郷のオーストリアで母とガーデニングをして暮らしたいと引退を匂わせている。



ネタバレします





始めから微かな違和感を物語の端々に感じながら、何とも言えない不安感の中に沈んでいくように観た。
TARがカッコよくて、自信に溢れ才能に溢れ、妬まれ、縋られ、良い意味でも悪い意味でも周りを巻き込んでいく。
指揮者TARの勇姿を早く観たいのにオケシーンがやっと出たのが1時間後!そう、結局はTARの人生を描く時にオケでの指揮者部分は一部でしかない。

野心家で強引なところもあり、故に他人の才能を嫌う。それを批難されればその通りだけど、そこに乗っかって利を得ようとする人の方が私には恐ろしく思えた。

どん底に落ち、失意の中帰った実家にも居場所はなく、言葉も通じないアジアの国へ。
ラスト指揮台に立ったTARがヘッドフォンを渡された時に、え?!となり、その後オケのバックに映像が流れて始め、客席にカメラは向けられる。絶句した。
TARの底力の強さを感じるところかもしれないが、オープニングで語られた輝かしい経歴のTARがラストに行き着いた場所がここなんだなって恐ろしくなった。
守られるべきは才能ではなく、人となり、その人の中身なのかと。そこに行き着くまでに誰も諭し改めさせる人はいなかったの?
絶望した。
何にと言われるとちゃんと説明できない複雑な思いになる…
ゆみゆみ

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