颯空

TAR/ターの颯空のレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.2
振り返れば振り返るほど良いと思う作品だった。話の筋自体は極めて使い古された王道なものだけども、そこに現代社会的な捻り(SNS登場以降の監視社会、LGBTQエンパワメント以降の人々、主に若者の価値観)が加えられることによりそれまでの似たような筋の作品とは似ても似つかない多角的な内容になっていて、特に特定の価値観に基づいた上で「芸術」はどう評価されるか?どう評価すべきか、また、もしその芸術がその時代の価値観に合っていなかった場合、「表現者」たる者はその作品にどう向き合うべきなのか、のせめぎ合いの議論を生んだターと生徒の掛け合いは衝撃で、自分の中でかなり問題提起された印象。
ターが生徒に投げかけた、彼女なりの芸術へ徹する者としての美学が個人的には監督のメッセージなのかなと捉えられた
そして何より、ケイト・ブランシェットの迫真の演技。これにはもうひたすらに脱帽。派手な展開のない2時間半という尺を長く感じず没入して観れたのは彼女の演技あってのものだった。アコーディオンのシーン、疲弊しきる中指揮者台に向かうシーンなど深く印象に残る場面が多かった。
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