颯空

aftersun/アフターサンの颯空のレビュー・感想・評価

aftersun/アフターサン(2022年製作の映画)
3.9
詳しい説明もないまま、ある夏の父と娘のホームビデオが流される。時折現れるフラッシュや人に飲まれ溺れそうな人物の姿、ホームビデオには映らない、父の苦悩。全てが曖昧なまま、さながら記憶を遡るその時のように淡く夢見心地な映像が画を支配する。抽象的であるからこそ表現できる人物の情感が詩情に溢れていて、儚かった。
何ら失ったことのない22歳の自分にはまだ解りかねることもたくさんあった。だからこそ、歳を重ね避けられない喪失を経るほどに咀嚼できる部分もあるのかもしれない。悲しいけれど、取り返しのつかない人や出来事に捧げる思いや祈りこそがその人そのものになっていくのかも知れないと感じた。これから先、再び観ることになった時自分が何を感じるのかを想像せざるをえないそんな作品だった。
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