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TAR/ターのkのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
3.9
天才にしては詰めが甘い。政治が下手。この世は、天は二物を与えるのに。
私の印象としては、贔屓目もあるかもしれないけど、ケイト・ブランシェットは自らの力であそこまで魅力的なキャラを緻密に作り上げたんだろうと思う。

つまりアフターサンのポール・メスカルは監督の手腕も大きく影響していると思うけど、この作品でのケイト・ブランジェットは監督の力量が薄く感じた。
パンフレット観ても、ケイト・ブランジェットにどうしても演じて欲しかった的な思いはすごく伝わったけど、主人公を女性にすることで変更すべき設定や流れは全然考慮されていない。

ベルリンの最高峰のオーケストラが指揮者もコンサートマスターも女性でふうふなことがかなり非現実的らしく、TARは女性と結婚することでその関係を盾にした(文句を言うとマイノリティを踏むことになり文句を言った人が不利になる)みたいな考察もあったけど、いやー、それにしてもさすがのベルリンでもレズビアンって家父長制的な業界でそこまで強いかな?

そしてこの作品が日本にきて、すごく嫌だと思うのが「狂気」というキャッチコピー。みんな、特にTARはずっと正気だったんじゃない。だからあんなイライラする音楽が全編通して流れていたのではないか。

オーケストラの演奏は本当に迫力があったから、できるだけデカいシアターを選んだ甲斐があった。鳥肌が立つ。全部ちゃんと演奏されていることに本当に感動。
そこを頑張りすぎてストーリーは…という感じかもしれないとか正直思う。

ケイト・ブランシェットが好きすぎて(タイプという意味で)鑑賞中は惚れ惚れしてしまうばかりでこの映画の歪みに気づきながら観れなかったけど、最も恐ろしいのは、私のこの歪みの認知の時差だと思う。
どうしても正当化しようとしてしまう。観終わって、それに気づいてかなり落ち込んだ。
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