よーすけカサブランカス

TAR/ターのよーすけカサブランカスのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.6
芸事における師弟関係がいかに難しいか、特にこのSNSの時代においては、という話である。正解に近づく術をを口で教えられるわけではないし、感性の世界なので居た時間の多寡に関係なく、若い才能に目が移ることもある。女性でしかもレズビアンながら実力で指揮者を勝ち取ったターにとっては、感性に従わずSNSの言葉に少し毒されてしまったポリコレの言葉に憤慨するのも頷けてしまう。
彼女にもほんの少しの非はあれど理不尽にも追放されたのちにたどり着いたのはバンコクでの謎アトラクションの生劇伴。高尚さからは程遠く、堕ちたものだ、と思うかもしれないがこれは彼女なりの新たな音楽との向き合い方であり、人生はまだ長い。そこでずっとやっていくのかもしれないし、呼び戻されるかもしれない。

ケイト・ブランシェット演じるマエストロとしてのリッチな、哲学の現れた繊細な生活を見ることができただけでも収穫があったと感じる作品でもあった。