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TAR/ターのmanaminieのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.0
考察のしがいがありまくる。オーケストラや各国文化、文学知識の動員を要求してくるし、すべてのシーンとセリフに意味があるからすごく疲れる映画ではある。

多義的で示唆に富んでいるし、過去と現在、転落と再生を描いていながら、人間ドラマでもあり、サスペンスでホラーでもあった。

私たち人間には完全な公平や平等な行動というのは難しく(AIでさえバイアスがある)、依怙贔屓や肩入れをせざるを得ない。
取り立てる相手に実力があれば問題がなくなるわけでもなく、結局のところ実績や実力、知名度というのはお気に入りの人物を重用する口実を探しているだけなのかもしれない。
それ自体は悪いことばかりではなく、贔屓される側が好意を利用するのも手段のひとつである。ただ、自分の仕事に真摯に向き合おうとするなら、自分にはバイアスがあり、誰しも好みがあり、完全に公平なプロジェクトや人事はないのだ、ということを忘れないようにしながら、それでも公平を期そうと努力するしかない。開き直りは自己の仕事の神聖さを汚し諦めることになるだろう。
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