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バビロンのmanaminieのレビュー・感想・評価

バビロン(2021年製作の映画)
4.0
トーキーになって没落したスターの悲哀って何度か描かれきたし(それこそ『雨に唄えば』の時代から)それ自体に、栄華と衰退というテーマとして心に響く哀しい美がある、でもこの映画はそれ以上の大作、超力作だった。
ある意味で実在した人物を描くよりも切ない。
バビロンはシャングリラのような理想郷ではなく、かつて繁栄した都市だということ。

ゾウが滑り落ちるコメディ、ハマり役すぎるマーゴット・ロビーの決めカットから始まってこんなに泣くと思わなかった。
ブラピ演じるジャック・コンラッドが何度も友達を助ける理由が後半になってめちゃくちゃ染みた。

「大きなものの一部になりたい」と語ったマニーが、「スペイン出身」と騙り、プロデューサーか?と問われて「重役です」と答え、そして「なんでもないメキシコ人」という。生き延びるために。
シドニー・パーマーやレディ・フェイにもあった、成功と、ルーツに対する疎外感とやるせなさ。
無軌道なのに家族を見捨てられないネリー。
批評家とのある種の共犯的関係も。

いにしえの映画セットや自然光撮影、かき集められたエキストラ、編集プロセス、機材なんかをみるのは素朴にワクワクした。

ラストシーンの多数の映画のカットアップは、こんなに自己言及的なシーンってあるんだと思った。
“全てが忘れ去られてもフィルムは残る、誰かが映画を観ればずっと昔に死んだ人を親しく感じる””映画は大衆のもの、教養よりも人を救うこともある”というメッセージを説得力をもって描くための3時間。
パーティ&ドラッグと異国趣味、狂乱の1920年代のカオスをデジタルフィルムに再現する意味。

デイミアン・チャゼルはアメリカの巨大産業(ジャズ、ハリウッド、宇宙開発…)にみる夢、光と影をわかりやすく感動的に描いていて一貫性があってすごいな〜
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