いずみたつや

TAR/ターのいずみたつやのレビュー・感想・評価

TAR/ター(2022年製作の映画)
4.0
ターという女性の「複雑な」人物像。
人間の外面と内面、光と影を描き出す緻密な構成に唸りました。

彼女は一体どんな人なのか。善人か?悪人か?と見入っているうちに、そもそも「善人」や「悪人」に当てはめられる人などいるのだろうか…という疑問が頭をもたげてきます。

才能に触れて内なる煌めきを得ることの幸せ、保身のための独善的な振る舞い、根本にあった純粋な思い、ひとつひとつの側面を切り取って善悪を評価することは可能かもしれませんが、それらすべてがあってこそひとりの人間なのだと思い知らされます。

その混沌のなかで、彼女の軸となっていたのが音楽なのだと分かる瞬間に痺れました。

彼女を「複雑」で「分からない」人間のように思ってしまいますが、「自分はそうではない」などと決して言えるわけがありません。