TAK44マグナム

女子高生に殺されたいのTAK44マグナムのレビュー・感想・評価

女子高生に殺されたい(2022年製作の映画)
4.9
僕は君の「殺意」が欲しいんだ。


女子高生に殺されることを願う高校教師。
彼はいかにしてその願望を叶えるのか?
そして、彼が自身を殺害する役に選んだ生徒は誰なのか?


凄い。そしてとにかく面白い!
普通でない願望を持ちつつも基本は真っ当で知性のある主人公が綿密に練った計画。
前半はその下準備に費やされます。
しかし、こちらには計画の全貌が掴めず、そもそも彼が追い求める「処刑人」である『キャサリン』が誰なのか伏せられている為に興味をひかせる推進力が半端ない。
常に燃料が投下され、グイグイと物語に引きこまれてゆきます。
人心掌握に長けている主人公が次々と女子高生を陥落させてゆくのはドンファン的な見せ場であり、そこから先はまさしく未知の世界が広がります。
なにしろ女子高生を拐かすことが目的ではないのです。
(相手の意志は関係なく)都合よく殺されなければならない。
しかも決行日を設定したり、殺人犯となってしまう生徒を守るために完全犯罪にしなければならないと制約まで科して、とにかくハードルが高い。
これは非常に難しい。どうするつもりなのだろうか?
と、それが後半部分をひっぱる第二の推進剤となっています。

荒唐無稽ともいえますが骨子がしっかりとした作品なのでメインとなる演者の力量は重要です。
拙い演技だと途端に現実感を失いかねません。
主演の田中圭は、モテモテだけれど中身は自分が殺されることばかり考えている狂気の男を巧みに体現。
大島優子も田中圭と「対決」する場面や自分に贖罪を科す表情など非常に映えています。
しかし何といっても魅力的なのは南沙良。
役としても魅力的でなければならず、特異なキャラクターに助けられた感もあるかもしれませんが今後に期待しか抱かせない光を放っていました。
他の俳優さん方も、ティーン向け恋愛映画でよく見かける「とりあえず出してみました」みたいなキャスティングではないのでしょう、素人目に見ても皆さんそれぞれ達者。
前述したようにリアリティの欠如が抑えられ、自然と本作の世界観を下支えしていて良かったと思います。

本作はリアリティラインぎりぎりの特殊能力モノともとれるでしょう。
ともすれば主人公を押し退ける強烈な存在感を発揮した、『あの2人のキャラクター』を主役に配したスピンオフ作品を是非、観てみたいと思いました。
少し猟奇的なテイストの、学園探偵ものなんてどうでしょうか。
それはさておき、本作は始めから終わりまでずっと、興味を失うことなく楽しめました。
突拍子もない内容にもかかわらず、文句をつける箇所の少ない力作。
一般的な評価はあまり高くないようですが個人的には紛れもない傑作でした。


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