エンニオモリコーネ、その人生のほとんどを音楽、映画の音楽の編曲と作曲に生きた傑物。
1928年に生まれ、2020年に亡くなっている。
その彼が自らその半生を振り返りながら、そして、その彼と共に映画音楽に携わった映画監督、音楽家、プロデューサーなど驚くべき著名な人物達が当時を語るドキュメンタリー。
映画音楽の地位の低さ、音楽だと思われていない時代に、その映画音楽に生き、苦悩し、何度も辞めようと思いながらも、確実にその映画音楽の地位と自らのレガシーを築き上げた人物。
幼い頃は医者になりたかったのに、父親の一言でトランペットを習うために音楽学校へ。
そこから、周りが才能に溢れる中、気後れもあったり、周りからの差別もあったり、先生にもあまり興味を持たれていない中、必死に食らいついて頭角を表していく。
映画の音楽の編曲に携わり始めてからも、あくまでアレンジ担当なのでエンドロールなんかにも名前が載らない時代が続くが、彼は決して諦めず。
それどころか、彼独自の音を探し続け、周りに何を思われようが、自分のやり方を見つけていく。
雑音のような音を作る方法を探したり、水に飛び込む音1つとっても色々こだわってみたり。
それがやがて、“モダンだ”“革新的だ”となっていく流れ。
イントロで記憶に残るフレーズを作ってその曲を印象付ける、とかもその頃の彼の手法の1つらしい。
それでも飽き足らず、次々に新しい音、音楽作りを絶やさず。
この作品の中にはたくさんの彼が携わった映画や作り手が出てくる。
この時代の映画にそこまで詳しくはないけど、それでも知ってる作品や作り手の名前や映像が出てくると驚く。
クリントイーストウッド、クエンティンタランティーノ、ウォンカーウァイ、スタンリーキューブリック、ベルナルドベルトルッチ、オリヴァーストーンとかも出てくる。
西部劇にも多く携わっていて、ギターやハーモニカ、馬が広野を走り抜ける時の疾走感や、哀愁漂うガンマンなど。
映画は映像や役者の演技だけでなく、それを演出する音楽があってこそ成り立つモノだとこれを観ると本当にそう思う。
普段は映画を観ながら音楽だけにフォーカスすることはそこまで多くはない。
せいぜい「キャッチーな音楽が良かった」とか「切ないテーマソングがとても雰囲気が出てた」とか、その程度ぐらいにしか感じていない自分の浅はかさも感じざるを得ない。
だけども、なくてはならないその映画の音楽。
映画という映像エンターテインメントにおいてそこに使われる音楽は主役にはなれないかも知れないが、かといってないと成り立たないモノ。
ここに常にこだわり続け、新しい道を進み続け、魔法のごとく人々を感動させる“音”を産み続けた男、エンニオモリコーネ。
卓越し過ぎて嫉妬や誹謗中傷に遭うこともあったり。
映画が作られているまさにその裏側で、使われる彼の音楽においての議論があって、自分の作った音楽をその場であれこれ批判も受けたり。
それでも彼は戦う。
逆に言えば、映画制作における絶対的な存在である監督やプロデューサーと会話ができ、時に自分の主張ができるという人物。
というか、彼らの元々のインスピレーションまでをも飲み込んで書き換えてしまうレベルの強烈さがある。
批判があっても、逆にその覇道やこだわり、性格や彼の音楽的感性が、他の作り手や作品に“音楽”という魂を吹き込み、活力を与えるような。
時折、自分や音楽に限界を感じながら、その才気を振るいながら道を切り拓くモリコーネの意思が込められているドキュメンタリーだった。
あまりドキュメンタリーは観てこなかったけど、たまたまこの作品と目が合っただけだけど、観て良かった。
150分超えで少し長いけど、彼の話しぶりに引き込まれるし、著名人達の語りがうまく音楽と融合するような演出があったり、実際の色んな映画のシーンが出てくるから飽きずに観れる。
むしろ、とても興味深かった。
というか、映画好きとしてはシンプルに勉強になるし、さらに映画を楽しめる要素を教えてくれるような作品。
こんなにワクワクするようなドキュメンタリーだとは思わなかった。やっぱり音楽の力、モリコーネが突き詰めたモノの力はスゴい。
“音楽の魔術師”って、多分こういう人のことを言う。
最後の畳み掛けからの最後の一言、これは、全てを物語っているかのよう。
『ワンスアポン〜』『ミッション』あたりは観たくなった。
※24年3月、映画オススメブログ、始めました。
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作品単発のレビューはここでやっているので、こちらは企画記事メインに挑戦したいと思います。
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