このレビューはネタバレを含みます
夢枕獏先生原作の小説を、気鋭のクリエイター陣が劇場アニメ化した本作。
山が見せる恐ろしい表情と、色彩豊かで静けさ、穏やかさすら感じさせる描写の遷移が絶妙で、山を映すシーンがひたすらに美しく惚れ惚れとしました。
想像を絶する疲労や低酸素による身体症状、死と常に隣り合わせであることで精神的にも蝕まれ幻覚を見るようになっても、頂を目指すことへの執着だけは手放さない…。
そんな彼らが恐ろしくもあり、そこまでの感情が生まれ出でることが羨ましくもありました。
人間にとっては生存本能が最も上位の欲求。それは今も変わらない本能だとは思いますが、人間は誰しも何かを目指し、何かに向かって歩みを止めたくない生き物なのではないかと感じました。
己が存在する理由を見出しながら、その過程で生み出されるロマンと恐怖、そして狂気に駆られて、死を目指して生きていく。
私自身は熱い人間ではないのですが、不思議とそう思わせられるような作品でした。
🏔 +α 鑑賞のきっかけ🏔
-TRPGの狂気山脈を通過して以来、山の頂を目指すことに恐ろしさと共に少しの憧憬を感じていた
そんな折、配信サイトで同作を見つける
-クトゥルフ神話という名が示す通り、あのシナリオはあくまで神話・ファンタジーだと感じていたが「あの恐ろしさは決してファンタジーの類ではでは無いのでは…」と思わされるほど
-私も山を登りたい 何かの頂を目指したいとぼんやり思うような一作だった