人気女優の玉城ティナさんが、自らの心の闇を映像化したと思われる短編映画だ。有名人であるため、愚痴や不満を安易に公言できない「私」。その「私」が真の話し相手に選んだのは、友人でも彼氏でもなく、謎の寝たきり少年だった。なぜ「私」は終始無言の少年に延々と話し続けるのだろうか。そして「私」と寝たきり少年の関係とはー。
玉城さんの初監督作品。「私」を演じるのは琉花さん。玉城さん本人をモデルにしているとみられる。
※以下、ネタバレ含みます。
舞台は東京・汐留にある、マンションとおぼしき建物の一室。壁も、天井も、床も真っ白な部屋だ。「私」はベッドに横たわる無言の少年ユウヤを相手に、心の赴くままに話し続けます。
「私はユウヤとしか話をしたくないの。だって、あなたは私に対して何も聞かない。何も興味がないでしょう?」と私。芸能人である自分に無関心で、なおかつ自分の言葉を受け止めてくれる人が側に欲しいー。そんな思いが伝わってくる。
間もなく目覚まし時計が鳴る。「私」は「時間だね」と言い、名残惜しそうに退室し、廊下を歩く。その先には、支払い窓口が。窓口の女性から「ありがとうございました」という声。続いて、次の客人が先程の部屋に向かう。玉城ティナ本人だった…
少年は言葉を発せられない、寝たきり設定のレンタルフレンドだったようだ。型にはめられて人形のように生きる芸能人の「私」を癒してくれるのは、一方的に愚痴を聞いてくれる、こうした人形のような聞き手だということかもしれない。
こうした欲求は、何も芸能人に限ったものではないと思う。現代社会のストレスに押し潰された人々が「帰宅した後ぐらい、口答えせずに愚痴を聞き続ける相手にかまってもらいたい」と考えても、何の不思議もない。だから、今後はAIアプリ相手に話しまくる人が増えるだろうな。本作品を観て、こう感じた。
「私」のセリフが一本調子なのが、本作品の弱点。抑揚がないので、なかなか頭に入ってきませんでした。もう少しメリハリがほしかったです。