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ケイコ 目を澄ませてのしょうたのレビュー・感想・評価

ケイコ 目を澄ませて(2022年製作の映画)
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逆光の土手を駆け上がったケイコのシルエットが風景の中に溶けてゆくラストが静謐な余韻を残す。映画の2時間近く、一人の若い女性の存在を身近に感じさせた。やがてその存在は、街なかの一人、見知らぬ一人に戻る。そして、どんな人にもその人にしかない存在感があり、人生があるのだろう。
そんなことを思わせる、想像力を掻き立てるような余白の多い映画だ。空間を意識した画面作りがなされていたと思う。例えば、病院に会長を見舞うシーン、窓外からの病室のカットをわざわざ入れている。ジムの描写は特にだが、空間の空気、匂いまで写し撮っているかのようだ。

今年はなぜか、聴覚障害のある人が登場する映画が多い。その一つ、「私だけ聞こえる」はコーダの女性が、目を見て話す手話コミュニティがどれだけ幸せか、言葉だけの会話がどれだけ冷たく感じられるかを語るシーンが印象深かった。
目でコミュニケーションすること、それはこのボクシング映画でも、音で相手の動きを予測できない代わりに、目ですべてを把握して互角の闘いをする姿として描かれる。ろう者の世界を、障害というよりも独特な豊かな生き方の一つのように描いていると思った。(警官の尋問や、手話にはしゃぐ聴者の姿など、ろう者の味わう社会の苦渋も描かれる。)目を澄ませてというタイトルが、そうした世界をよく伝えてもいるだろう。

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12月28日のテアトル新宿での舞台挨拶
岸井ゆきのさんは小柄なかわいい女性だった。改めて演技(眠っている自分を開く)力を思った。
緋美さんは手話は目をみてのやりたいなのでコミュニケーションしやすかったと語った。
三宅監督は、こんなに目のきれいな人がいるんだ、と二人に会って思ったとのこと。
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