信頼できる作り手三宅唱監督によるザラついたような映像が痺れるほどクールなボクシングムービー。
聴覚障害者を演じる岸井ゆきのの素晴らしい演技とそれを支える確かな演出と撮影。聴覚障害者が出会う理不尽やトラブルなどのリアルな描写はどれもハッとさせられるものばかりでありながら、決して同情を誘うような描き方ではないところが良い。声が発せない分、表情で魅せる岸井ゆきの。特に三浦友和と鏡の前でシャドーボクシングするシーンでの泣き笑いのような表情が堪らなく良かったです。
過剰な演出などに頼らず静寂すら操る監督の手腕に唸らされる徹頭徹尾カッコいい作品でした。