クーデターと言えば、邦画では本作を思い出す。日本では、古くは「五•一五事件」「ニ•ニ六事件」もあるが、本作は1961年のクーデター未遂「三無事件」をモチーフにした推理作家•小林久三氏の小説が原作。小林氏は元松竹のプロデューサーで、映画界を舞台にしたミステリも多く執筆しているが、本作(原作)は、映画「カサンドラ•クロス」に触発され、日本でも列車を舞台にしたパニックサスペンスができるのでは、との思いで執筆したという。舞台は寝台特急「さくら」で、日本の右翼国家化を目指す自衛隊の反乱分子が列車をジャックし、自衛隊の国防軍化を要求する(三島由紀夫事件も想起される)。そう聞くと、パニックサスペンスというより、ポリティカルドラマのように聞こえるが、社会派(左派)の巨匠•山本薩夫監督によって、案の定、そのように演出されている。しかし、渡瀬恒彦、山本圭の熱演が光り、脇に回っている吉永小百合も美しい。また、松竹なので、渥美清が乗客の一人でカメオ出演している。寅さんの旅の途中だったのか。