イチロヲ

にっぽん・ぱらだいすのイチロヲのレビュー・感想・評価

にっぽん・ぱらだいす(1964年製作の映画)
3.5
在日アメリカ軍の特殊慰安婦に従事する女性たちが、女郎屋の再起を目指すべく赤線商売に乗り出す。赤線地帯の群像劇を描いている、ヒューマン・ドラマ。

戦後混乱期から売春防止法成立までの流れを背景にして、赤線地帯に縋らなければならない女性たちと、そこに出入りする男性たちの種々相を描いている作品。当時の色街を再現している舞台セットと、女優陣のエネルギッシュな掛け合いが印象に残る。

登場人物では「外界から批判を浴びせるのは道理ではない。自分自身で経験することが先決だ」という信条のもと、赤線に身を置く女子大生(加賀まりこ)が印象深い。外野から火種を投げ込もうとする、ネット世代と同等のテーマ性が見えてくる。

本編の台詞を借りると、「売春防止法は皆さん(娼婦)を人間と認めた最初の法律です」ということなのだが、本当にその通りだと言い切れるのだろうか。アイデンティティとヒューマニズムの在り方について、考えさせられる。
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