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君を想い、バスに乗るのgenarowlandsのレビュー・感想・評価

君を想い、バスに乗る(2021年製作の映画)
3.7
妻を亡くした年老いた男がバスを乗り継いで思い出の岬へ向かう、心温まるロードムービー。行く先々で、男がいかに人生に真摯に向き合い、優しい人柄なのかがわかるエピソードが続く。妻との思い出の痕跡をたどりながら、二人が最初に出会い住んでいた町を経て、岬にたどり着くと、待っていたのは…

スコットランドから縦断する牧歌的なイギリスの風景とひなびた町、そして若い二人の人生が重なり、映像が美しく悲しい。

デビッド・リンチの「ストレイト・ストーリー」を思い出したが、深刻さが違いました。

男の人生が逆戻りし、逃げるように去った町へ使命感を帯びて向かうようすは、何かイヤな予感もするのだけれど、妻との愛に満たされ幸福な時間のようでもあった。悲しみと喜びが交互にやってくる。

車窓から見える景色は変わらず、二人の愛も変わらない。男は若い時のまま、傍らに若い妻を抱き抱えている。それは喜びも痛みも分かち合った夫婦にしか見えない世界。

温かい作品でした。

スコアをあまり上げられなかった理由は、特殊メイクのティモシー・スポールが老人を演じるのではなく、高齢に見える俳優が演じれば説得力が違ったのと、ラストに繋がる現代的演出は要らなかった。この2つが私は気になってしまいました。でも、全体的に温かいエピソードが連なるいいお話でした。
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