このレビューはネタバレを含みます
タイトルの通り、ミア・ゴスが若者と老婆の二役を演じ「昼＝現在、ポルノ映画に出る若者＝生」と「夜＝過去、ホラー映画に出る老人＝死」の２本線が交錯する。その間を映像＝福音派のテレビ＝Xキリスト＝十字架が繋ぐ。
明るい部屋で見たせいかもしれないが、あんまり乗れませんでした。
主人公と老婆の顔が同時に映らないことを意識させつつ、境界が崩れていく。俯瞰が多いのは、老夫婦がセックスするベッドの下で、主人公が体を360度回転させる「X」への前フリだったと理解したが（セックスしたら死ぬお約束を老人の心臓発作でやる発想よ）、他の交錯シーンにも、こんな感じでもう少しアイデアが欲しかった。
最後が拳銃の撃ち合いってのもなあ…。老いて性＝生を求める女性を不気味な存在として描くこと自体感心しないし、主人公が神の介入によって老婆を乗り越えることで（文字通り）、父からの抑圧であり、老人を縛りつけてきた神を、全然違う形で見つけるオチも、うーん、もう一声欲しい。
もっと不真面目に見るべきだったのかもしれないが、映画の作りがめっちゃ真面目だからなぁ。冒頭から映画についての映画だと宣言され、名作ホラーのオマージュはもちろん、反転への意識（シャワーを浴びて泣く男、純朴そうで殺されるジェナ・オルテガ）や、繰り返される鍵穴描写、スプリットスクリーンなど「映画的な技巧」が前に出過ぎており、話の焦点がボケている印象だった。
サイコへの言及もあるが、老夫婦目線の良い話のはずが実は分裂したホラーだった、という一本の線で描いた方が良かったのではないか。と思ったら、老婆の若者時代が続編らしい。こっちの方が面白そう。
