みほみほ

マイ・ブロークン・マリコのみほみほのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
3.4
🦴2022年91本目🦴

こんなにも結びつきが強い友人が居る世界線に生きた事がないので、キャラクター設定に対してさほど現実味を感じられずにいた部分があったんだけど、この2人はお互いに友情というよりも、一緒に支え合って生き抜いてきた家族という気がした。

原作未読なので比較のしようがないんだけど、映画では語られなかったシイノの生い立ちもなんとなく想像が出来るし、一見マリコが守られてるように思えるけど、シイノにとってもマリコが唯一の支えであり、大きな存在なのも十分伝わる。

マリコのあの強烈な生い立ちを含めて、普通なら離れていってしまうような行動すらも見守りながら、マリコの事を本気で叱ってくれるシイノという二人の関係性は、姉妹のような家族そのものに思えた。そう捉えると 非現実的に思えたシーンの数々もなんとなくしっくり来て、2人の強い結びつきと互いへの思いを感じることが出来る。

85分という短い尺でありながら、もっと時間が経ったかのような感覚だった。タナダユキ監督初体験だったけど、作品の中に不思議な間合いのある人だなと感じた。私としては 現実味に欠けた部分を強く感じてしまったので、もう少しキャラクターを色濃く描いて欲しい気もするんだけど…

私個人の意見として、どうしても永野芽郁のイメージと今作のシイノのイメージが合致しなくて、あの可愛らしい顔から口汚い言葉が出てくる度に、なんか様になってないな…と違和感を感じてしまったので、顔のニュアンス的に奈緒と永野芽郁が逆だったらまた面白いのかな?とも思った。

永野芽郁が泣くシーンがいくつかあったけど、どれも途中から顔を隠してしまうので、こちらも心が揺らぎかけた時に涙で濡れた顔を隠されてしまうと、妙に残念な気持ちになった。今までの役柄とは違い、ここ最近思い切った役柄が増えてきて、これから可愛いだけでは通用しない演技にも挑戦していく姿勢は素晴らしいと思うけど、ここで止まらずに これからも様々な役柄をこなせる人になって欲しい。

奈緒も いつ見ても同じトーンのイメージが抜けないので、物凄く恐ろしい役とかも映えそうな女優さんだから、そちらも観てみたいなと思った。

完成報告試写会だったので、2人の作品にかけた思いもしっかり聞けて良かった。特に奈緒は思いをうまく伝えられる女優さんだなと感じたし、永野芽郁もどれだけ自分にとっての挑戦だったか話してる感じから伝わったので、この先の二人の演技の幅の変化にも期待していきたい。


スコアは思ったより低くなってしまったけど、事前に目にしてたTwitterの感想の熱量が高かった事で、物凄くドシンと真っ向から突き動かされるような期待をしてしまっていた自分がいたので、ちょっとそこまで突き動かされるものはなかった落胆だったり、重さをマイルドにしたいのか、シイノ単独行動の時に 妙な笑いを入れてきたりだとか、それが世界観の中で浮いていてあまりウケていなかったりもしたので、変なノリツッコミとか入れなくて良かったなという気持ちも色々とあったり。(原作でもあるのかもしれないけど)

もっと豪快な永野芽郁が観れるかなと完成報告の話を聞いて思ってしまった分、少し物足りなさを感じたりもしました。

機会があれば、とにかく原作を読んでみたい。実写だとなかなかイメージとか細かい部分が難しいと思うけど、原作を読んだ上で映画と重なる部分を見い出せたら良いなと思う。

最後に… 意外とコミカル要素も散りばめていたり、遺骨を持ってからは旅のような思いの外のんびりしたシーンが続いたりはするけど、マリコの生い立ちに関してはとても苦しくて嫌な気持ちになりました。あんな親がいたら遺骨を奪ってやりたい気持ちも分かるし、遺骨を奪うシーンが個人的に本作の感情の揺れのピークだった気がするくらい印象的なシーンでした。

ふわっふわっと行間を読むようなシーンが多く感じたので、もっと鮮明に刻みつけて欲しかったです。(私の好みの問題ですが)

ハッキリと何かを成し遂げるわけでもないけど、
最後にはシイノの枯れきった心がほんのり色づいてまた満たされていくような、そんな優しいラストシーンだった。

無性に牛丼2杯平らげたくなった!


完成報告試写会にて。
イイノホール(fan’s Voice枠)
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