味噌のカツオ

マイ・ブロークン・マリコの味噌のカツオのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
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わたくしは知らなかったのですが、原作のコミックスは相当に話題になっていたようで。
またその要因として“面白い”というよりも、いろんな意味での衝撃として刻まれて。多くの読者が思い入れを持っていた作品であると。

そうした話題作を実写化…というのは よくある企画ですが、既に読者の中に深く存在してしまっているマンガを映像化するのって、基本 否定や懸念の声が多くなるもの。

であればなおのこと、マンガの再現フィルムって難易度高そうなんだけど。今作は、原作ファンからも受け入れられているようですね。

物語的には少々ハードな感情が入っていまして。正直これまで永野芽郁さんにそうしたイメージは合致していませんでしたが、とても良かったですよ。
確かに やさぐれた振る舞いには若干の違和感はありましたが、勝ち気なシイノが弱気になったり、動揺したり苦悩したり。それらは全編通してしっかりと伝わってまいりました。

一方の奈緒さんは 要所要所でしか登場こそしませんが、その一瞬で持っていく感じはありました。
あと旅先の海でシイノと関わることとなるマキオ役の窪田正孝も、イイ感じで正体不明であり、表情なんかもマンガ的な無機質感があって見事でした。

作中でシイノとマリコに降りかかる出来事。その一つひとつは確かにハードなものではありますが。
どちらかというと そうした事象以上に響いてきたのは、その都度 吐き出される感情だったり。重ねて言うなら、所々でフッと語られるセリフだったり。
そうして引き込まれていく部分が大きかったですね。

セリフと言っても「たとえばどんな?」と問われると思い返せないんだけど(失礼)。
でも ここでそういう言い回し…そう表現するんだ…ということが数か所あって。
現実的な意味でのリアリティではなく、物語としてのエネルギーにつながっていて。それもまた今作の魅力のひとつだろうなと感じました。

ちなみにわたくしは、映画を見てから原作の紹介記事などを“試し読み”レベルで見ただけですが。
原作のタッチや雰囲気は それなりにではありますが伝わってきますし、映画で描かれた細かなシーンからセリフまで、ちゃんとあるんですね。原作に。

それら原作の持つ大切な部分を、タナダユキ監督をはじめ演者からスタッフからが ちゃんと受けとめているからこその成功なんでしょう。

というわけで原作ファンが見ても「よく出来た実写版だ」と思ってもらえるでしょうし。
わたくしのように「良い映画だった」と思ってから原作漫画を見ると、もっと強烈に感じられるのかもしれません。

あと題字がすごくいいなと思ったんだけど、これも原作のそれなんですね。
味噌のカツオ

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