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マイ・ブロークン・マリコのnagranydeのレビュー・感想・評価

マイ・ブロークン・マリコ(2022年製作の映画)
4.0
シイノがラーメン屋のテレビで流れたニュースでマリコの死を知る一方、ニュースを見てた客たちが「どうせアレだったんじゃないの〜?」と何も知らないのにあーだこーだと話す冒頭のシーン。
当たり前の日常の中に死の報せを伝えるニュースが組み込まれていると、他人の死の重さに慣れてしまい、死者を慮ることも忘れていく。
やりきれないが、ある意味ありふれた会話だと思う。

そう思ってはいても、マリコのような複雑な事情と痛みを抱えた人間を目の前にしたとき、自分は救いの手を差し伸べるような人間ではないし、面倒そうだと思って無関心を装ってしまう。

果たしてシイノのように助けを求める友人のために戦えるだろうか、死んだ友人の痛みを引き受けるだろうか、自信がない。
ただ、自分の中でちょっとした変化はある。

自分は希死観念を含んだ発言やツイートを見ると顔をしかめてしまうが、そういう人間を目の前にしたとき、きっと何も言えない。
難しい事情を難しい言い回しで話す彼らに対し、「大変なんですね…」と分かった風な顔をして、その場を取り繕うだろう。

この映画を観た今なら、「死にたい」という言葉に対して、「違ぇだろうが!"Live forever"だろうが!他人様に迷惑かけていいときだってあるんだぞ!」ぐらいは返せそうだ。多分こういうの逆効果なんだろうけど。不器用なりにも人の痛みに向き合える…ような気がする。
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