こなつ

小さき麦の花のこなつのレビュー・感想・評価

小さき麦の花(2022年製作の映画)
4.0
2011年、中国西北地方の農村。貧しい農民ヨウティエと内気で障害のあるクイイン。互いに家族の厄介者だったふたりは、見合い結婚。やがて互いを慈しみ、力を合わせ、作物を育て、自分達の手で質素な家を作り、慎ましくも寄り添いながら生きている。

妻クイインを演じるのは、かつて「国民の嫁」と呼ばれた人気女優ハイ・チン。ノーメイクで農村の女性になりきった演技は圧巻。ヨウティエを演じるウー・レンリンは、監督の叔父で本物の農民というから驚く。貧しくも優しく、逞しい農民の男性の姿を、まるで昔から俳優だったかのようにしっかり演じている。

互いに寄り添い、大地に生きるふたりの姿が眩しい。口数は少ないが、ぎこちないながらもお互いを心底思いやり、愛という言葉は一度も出てこないが彼らの愛は美しく、幸福そのもの。これが本当の優しさ、これが本当の愛だと私達の心に強く響く。

ロバがいて、ひよこがいて、麦の種で手の甲につくる花のしるし、農村の厳しい現実の中でも、穏やかな日々が流れる。二人にとってずっと続くはずだった幸福なのに。運命はあまりにも切ない。

最後に全てを手放したヨウティエは、どうなったのだろうか?

中国で若い世代を中心に社会現象となった「奇跡の映画」。それは永遠の愛の物語だった。
こなつ

こなつ