こなつ

雨の日は会えない、晴れた日は君を想うのこなつのレビュー・感想・評価

3.8
何てお洒落なタイトルだろう。そう思って気になっていた作品。2021年に亡くなった「ダラス・バイヤーズクラブ」「C.R.A.Z.Y」のジャン・マルクヴァレ監督最後の作品。ジェイク・ギレンホール主演。

観始めて最初はタイトルの印象とはちょっと違う展開だと思い始める。ジェイク・ギレンホール演じるディヴィスがやたら破壊する男で精神が壊れた男性の話かと思っていたら、全てが繋がり明らかになったラストに心揺さぶられた。

突然妻が交通事故で死に、涙ひとつ出ないディヴィスは、自分は妻を本当に愛していたのだろうか、妻の事を何も知らなかったと気付く。自らの感情と上手く向き合えない哀しみをあらゆるものをぶち壊すことで乗り越えようとしているかのような行動。元々は、妻が生前冷蔵庫の水漏れを直して欲しいと言っていた事を思い出し、分解すればその仕組みがわかるという義父の言葉でやってみるのだが上手くいかず、破壊行為がどんどんエスカレートし、最後にはブルドーザーで自宅まで壊しにかかる始末。子供じゃないんだから、分解したら組み立てし直さなきゃと最初の方はそう思って観ていたが、ディヴィスにはサラサラその気が無いし、まるで何かに囚われたように破壊し続ける。

故障していた自動販売機の会社のカスタマーセンターに苦情の手紙を書きながら、そこに自分の私的な事まで細かく書いて、それを受け取ったカレン(ナオミ・ワッツ)に興味を持たれてしまう。誰かに聞いて欲しかっただけのディヴィス。今まで無頓着、無関心で生きてきたディヴィスには、自分が哀しみや虚しさから立ち上がる術が見つからない。自分探しをしているような少年、カレンの息子クリスとの出会いが、ディヴィスの心を次第に動かして行く。

ある日、自分の車のサンシェードに挟まれていた付箋のメモを見付ける。「雨の日は会えない、晴れた日は君を想う」。それは亡き妻ジュリアが残して行ったディヴィスへの言葉だった。サンシェードを使わない日は会えない、晴れた日はそのメモを見て私を想って、、、メモに託した愛の言葉。ジュリアの深い愛を知った時、ディヴィスは初めて泣いた。自分を想ってくれていた大切な人を失った事に気付いた涙だった。

ジェイク・ギレンホールの、時には狂ったような時には悲壮感漂う幅のある演技が凄い。ディヴィスに寄り添うカレンを演じるナオミ・ワッツが温かくてとても魅力的だった。

途中まで意味不明なシーンが多々あったのだが、ラストに近づくにつれこの作品の深さを感じ、ラストでディヴィスが亡き妻に贈ったプレゼントがあまりにも素敵過ぎた。子供達と走るディヴィスの笑顔に胸が熱くなった感動作。
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