こなつ

ありふれた教室のこなつのレビュー・感想・評価

ありふれた教室(2023年製作の映画)
4.0
興味深く鑑賞した。些細な事件の対応の仕方で、学校教育のシステムの欠点が暴かれていく。どこの国でもどの学校でも有り得るかもしれない教育現場のリアルな現実。

若くて熱心な中学の教師カーラ(レオニー・ベネシュ)は、赴任したばかりの学校で盗難が相次ぎ、生徒が疑われる。独自の方法で犯人探しをしようと思ったところ、事態は思いもよらぬ状況に陥り、赴任以来同僚や生徒の信頼を獲得しつつあったカーラが窮地に追い込まれて行く。

中学1年生ともなれば、既に自分の考えを持ち、誤魔化しは利かない。生徒達の反乱、保護者の猛烈な批判、職場の教師達とも対立してカーラはどんどん孤立していく。カーラは教師として子ども達に真摯に向き合い、授業も魅力的なのに、どうしたら良かったのか、何が悪かったのか、スクリーンを見つめながら、カーラの苦悩がヒシヒシと伝わった。盗難だけではない、いじめや暴力、学校教育が抱える問題は計り知れない。自分が参加した保護者会でも厳しい意見が多かった事を思い出した。そう言えば、子供達の学校では体育の時間などは、お財布など貴重品袋に入れて職員室に保管されていた。答えが見えない、終わりがない。教育現場の過酷な現状を通して、正義とは?真実とは?そんな事を考えさせられた作品だった。

トルコ系の移民であるイルケル・チャタク監督の長編4作目。本作が日本の劇場での初公開となった。カーラ役のレオニー・ベネシュの演技が高く評価されている。素晴らしかった。少年オスカー役のレオナルド・シュテットニッシュ、映画初出演の新星、実の父親が本作の教師ニーベンヴェルダ役のミヒャエル・クラマーだと鑑賞後知って驚く。オスカーのセレモニーで嬉しそうに、誇らしげに並んで写真に収まっている親子の姿が印象的だった。
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