旅するランナー

小さき麦の花の旅するランナーのレビュー・感想・評価

小さき麦の花(2022年製作の映画)
4.6
【Earth, Wind & Fire】

土は語り、
風は歌い、
火は想いを伝える。

2011年、中国西北地方の農村。
厄介者扱いされる夫婦ヨウティエとクイインの不器用で慎ましやかな生活が、詩情豊かに描かれます。
ツバメが自分の作った巣を忘れないように、自分たちで作り上げた家で、お互いを思いやって生きる姿に心打たれます。
時代の波に翻弄されて、悲しい結末を向かえても、二人の美しい愛情は忘れません。

<神戸映画サークル第605回例会上映/月報での解説>
・出演者はほとんど地元の人で、プロの俳優は妻クイインを演じたハイ・チンのみ。
・リー・ルイジュン監督が原題の「隠入塵煙」に込めた意味は「隠入塵煙とは、一切の物事は最終的に陳腐な日常に埋もれ、時間の層の中に隠れてしまうけれど、一方でそれらは生命と同じく変化の相を秘めていて、目には見えずひっそりと新たな変化を始めており、日常のあらゆる瞬間で私たちに寄り添っていてくれる、ということを表しています」と語っている。
・甘粛省張掖市花牆子村は監督の故郷。ここはシルクロードの要衝であり、古くはオアシス都市として栄えた土地で、周囲にはゴビ砂漠があります。粘土が豊富なため「日干しレンガ」で建てられた家が数多くあります。日干しレンガに草花が混じっていることが、「花牆子村」(牆は壁・塀の意味)の名前の由来だそうです。
・ヨウティエ役のウー・レンリンは、甘粛省の村で実際に耕作を営む農民であり、監督の叔父(叔母の夫)にあたる。監督の映画には何度か出演している。