花俟良王

ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュの花俟良王のレビュー・感想・評価

3.5
映画でも度々描かれる悪名高きグアンタナモ収容所。旅行中にタリバンの疑いで拘束された息子を取り戻そうとする母を中心としたお話。普通ならシリアス一辺倒になりそうだけど、お母さんが肝っ玉というか、空気を読めずに図々しい、でもいい人なので救われる。

ただし展開はドライだ。拘束からの日々をあえて盛り上げることなく、ぶつ切りのエピソードを積み重ねていく。個人的には人情物としてもっと泣き笑いをしたかったところだ。しかし、息子の白黒もはっきりしておらず(現状証拠かなり黒に近い)、拷問も行われ、かつ9.11.から20年以上も経っているのに同様の収容者がまだ何十人もいる状況だ。エンタメを追求すべきではないのだろう。

本作はドイツ作品。アメリカ映画は当事者としてグアンタナモを「告発」「反省」などのスタンスで映画化をしているが、本作はあくまで母と家族、そして弁護士たちとの絆に重きを置く。もちろんそこを通しての社会への問題定義は行われる。これはもう好みでしかないが、情に重きを置くのにドライな構成なので、私は今ひとつのめり込めなかったというのが正直なところ。それでもお母さん役のドイツの人気コメディエンヌの方の演技は素晴らしい。見るべき、語られるべき変化球の社会派映画だと思う。
花俟良王

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