かなり引き込まれた。泣きそうにすらなった。
これまでも語られているヨーコとの別居期間だが、ここまで詳細が描かれるのは初めてなのでは?ビートルズだけでなく、ロックファンならワクワクして見れるはず。
ただ、この作品が数多のビートルズドキュメンタリーより優れているのは、メイ・パンという若い女性のラブストーリーとして見事に成立しているからだろう。悪役となったヨーコは(きっとショーンも)目くじらを立てそうだが、今後役者が演じ劇映画化されても大いに泣ける切ない秀作となるだろう。
立場が違えば見方も変わるのは当然だが、何よりヨーコの先妻シンシアとの息子ジュリアンの証言が効いている。疎遠になっていた父との時間を必死に確保してくれただけでなく、共に楽しい時を過ごしたメイ・パンへの愛と感謝に溢れており、いかに素晴らしい季節だったかを語る。ジョンの解放されたような柔らかい表情も印象的だ。
まだ20代前半のメイは無防備な美しさと、奔放な笑顔と、苦労人としての気配りが同居していて魅力的だ。大人たちに翻弄された嵐のような、そして夢のような18ヶ月は彼女を色々な意味で変えてしまったのだろうが、恋する喜びや哀しみ、人との触れ合いで成長していく過程は私たち市井の人間と大差ない。だからラストのちょっとした演出も嫌味なく、普遍的なこととして感動した。
端から見ればヨーコの気まぐれとジョンのつまみ食いなのかもしれない。ただ、若きメイにしてみれば生涯忘れることのない経験だろう。その儚さと瑞々しさをリアルに感じることができる作品だ。