長尾蛙

ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュの長尾蛙のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

おしゃべりおばちゃんのテンプレみたいなカーチャン…どこにでもいそうな、ちょっとパワフルなカーチャン…。息子への愛ひとつだけを原動力に、よくぞあんなに困難な道のりを戦い抜いたもんだ。
野を越え海越え、仲間を得て、世界に訴えかけ、それでもあっけなく数百日経過するむなしさ。やっと歓喜の日が来たと思ったら人違いだったときの絶望…。糸が切れたように寝込んでも、また立ち上がって、支えを受けながら、疑心暗鬼になりながら、大願成就した瞬間の涙!

家を守っていた家族は大変だったろうな、と思う。長男のことしか頭にない母の代わりに家事を担って成績に響いた次男…。待ち疲れて別れを選んだお嫁さんのことも、誰が責められようか。

宗教、国籍、二国間関係、国民感情。脚色ありとはいえ、実際に起きたことだし、未だに渦中で苦しむ人もいる。戦争は時と場所を変えて連綿と続いている。
家族や友人、大切な人がこんな目に遭ったとき、自分は彼女のような一歩を踏み出すことができるのだろうか?

実際のところ、彼がほんとうに過激派組織に属していたのか、何をしていたのかは、謎のまま。収容が不当なもの、人権侵害であることを争点にして裁判は進んでいく。きっと現実のほとんどが、明るみにでないことを気にしつつも妥協点を見つけて先に進んでいくのだ。

エンディングによるとカーチャン大病を患ったらしい。元気でいてほしい。
押し掛けてむりやり巻き込んだ弁護士事務所に、いつしかコーラが常備されるようになってたシーン、なんだかじんわりと来るものがあった。
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