長尾蛙

関心領域の長尾蛙のネタバレレビュー・内容・結末

関心領域(2023年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

みなさんもーちょい犬と遊んであげてよ…。

映像作品の演出で無音になるのはよく見るけど、冒頭から暗転のまま音だけが生々しく鳴り続けるのは面食らった。(よもや機器の故障ではないかとか…)
耳を澄ませ、という合図だととらえた。

ヘス邸が舞台の間、ずっと不穏な重低音、そして怒号、悲鳴、銃声。
明るいのに不穏、でミッドサマーを思い浮かべたけど、ここではパッと見おかしなことは起こっていない。パッと見。その豊かで裕福な生活が、世界史上もっとも残虐な出来事のひとつを、そうとはカケラも思わずに享受しているもの。奪っている自覚なんかつゆほどもない。どんな啓蒙を受ければ、ここまで対象を人間と思わない…そんな言い方も生ぬるい…そういう考え方を持てるんだろう?

と思いながらこれを見ている自分は、もしもいずれ経験したことのない「戦争」という狂気の中に置かれたとき、こんな平和な考え方をしていられるだろうか?

終盤突然現代が、かの博物館を語り継いでいくための清掃が、奪われた山のような(本当に山のような!)靴や、様々な持ち物が映される。画面のこちらにいる自分は、何もかも「見る」ことしかできない。それは幸せなこと。
真っ暗な廊下の向こうにヘスは何を見たのか?「隣の施設」の行く末?自分の運命?(余談だがヘスのことをWikipediaで調べるときは、彼の絞首刑の様子を映した画像がしっかり載っているので注意)
長尾蛙

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