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コール・ジェーン ー女性たちの秘密の電話ーのKUBOのレビュー・感想・評価

3.8
1960年代、まだ妊娠中絶が認められていない時代に、女性たちの命を守るために戦った非合法の団体「ジェーン」の活動を描いた実話に基づく作品。

妊娠して幸せに包まれていた主婦ジョイは突然の胸の痛みに倒れる。心臓の病が悪化し、このまま妊娠出産となれば母体の生存率は50%だと告げられる。

なんとか中絶を、と病院に相談しても当時の法律では違法となり、許可が降りない。

そんな時、ダウンタウンで目にした”CALL JANE” という貼り紙を見て、ジョイは「ジェーン」の門をくぐる。

女性が中絶の権利を勝ち取るまでの物語だが、意外に楽しく見られるエンターテイメントになっている。

それまで普通の主婦だったジョイが、困っている女性のために立ち上がり、ジェーンで働くようになっていく過程は、女性の自立を成長と成功の物語として描いており力強い。

ただ「医師免許なしにこんなことしてて、何かあったら大変だ」とか、「こんなに家を空けていたら家庭不和になっちゃうよ」とか、いろいろハラハラはしたけれど。

ジェーンのボス役のシガニー・ウィーバー。今までは『エイリアン』をはじめ「闘う女性の象徴」のような女優さんだが、本作でも、闘う相手こそエイリアンじゃないが、女性の権利ために国と闘う活動家を演じて、その存在感は大きい。

ラストシーン、1973年、アメリカでやっと妊娠中絶の権利が認められ、めでたしめでたしで終わるはずだったのだが、

本作制作中、トランプ大統領が多くの保守派判事を最高裁判事に任命し、昨年、アメリカの最高裁は再び女性の妊娠中絶を州の判断に委ねるという判断をくだし、状況はこの映画の時代に逆戻りしそうだ。実際に14の州(南部中心)で中絶が全滅禁止された。奇しくも、トランプ支持が強い州ばかりだが。

悲しいことだが、この映画は過去の実話として見るだけでなく、今こそ見るべき映画になってしまった。

宗教上の信条はあるにしても、母体の命は守られるべき。ぜひ多くの方に見てもらいたい作品です。
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