Jun潤

生きててよかったのJun潤のレビュー・感想・評価

生きててよかった(2022年製作の映画)
3.6
2022.05.19

予告を見て気になった作品。
主演は自身もプロボクサーの経験がある木幡竜。

かつてロッキーに憧れ、プロボクサーとなった楠木創太は、ドクターストップがかかり引退を余儀なくされる。
恋人の幸子との結婚も決まり、社会人として新たな生活を始めるも、リングの上で生きることしか知らない創太は上手く馴染むことができない。
そんなある日、謎の男の誘いを受け、地下闘技場で闘うこととなる。
初戦の結果は惨敗、リングから降りても尚闘いを辞めない創太に幸子は別れを告げる。
創太と同じようにロッキーに影響を受け、役者を志した健児も、闘いながら生きる創太に自身の生きる道を見出し、トレーニングを指導する。
創太、健児、幸子にとっての生きることとは、れぞれの歩む道の先はー。

男の子が大好きなステゴロを軸とし、心が幼いまま歳を重ねてしまった3人が、不器用に生きる様を描いた苦々しい青春群像劇。

物語の緩急としてはなにかわかりやすい山と谷があるわけではなく、登場人物の心情もなだらかに進む構成。
しかし挟まれるアクションの迫力から、キャラクターの心境に沿い、同じように高揚する没入感が出ていました。

主演の木幡竜が元プロボクサーということもあって、ステゴロ場面は圧巻の一言。
特にわかりやすく激しい動きよりも、動作の前に小刻みに震える様子や、パンチの後の仕草などにリアル感があり、演技としてのアクションなのかと心配になるレベルでした。

演者が「バトルセックス」と評していた通り、性と闘いが今作でテーマとして描かれていたもの。
その延長線上に自分が生きる世界があったようにも見えました。
右脳が考えるままに動き、左脳で違うことを考えて抑制する。
そうして死んだように生きるのではなく、自分のため、誰かのため、愛を与えられ、誰かに愛を与えるために生きる。

創太、健児、幸子の3人は物語上で自分の生きる道を見つけられたように思いましたが、個人的には柳俊太郎が演じた謎の男も良かったですね。
空っぽの拳銃に頼り、他に縋るもののない弱々しい姿から、創太の強く生きる姿に感化されて涙を流す、なんだかんだ一番人間臭いキャラクターに仕上がっていました。

タイトルにも物語の中心にも常にあり続けた「生きる」ということ。
終盤の展開的にどう繋がるのかと思いきやそう着地させるとは。
オチだけはどうにも納得できなかったかなぁ…
Jun潤

Jun潤