藍紺

PLAN 75の藍紺のレビュー・感想・評価

PLAN 75(2022年製作の映画)
3.9
資金集めの段階で「主人公が高齢者の女性だとお客さんが入らないので難しい。若い男性でないと」と日本の映画会社から断られて国際共同制作となった経緯をTwitterで知り憤慨。公開前から絶対に劇場で観なければと勇んで鑑賞してきました。
75歳から自らの生死を選択することができる制度”PLAN75”。高齢者問題に焦点を当てた今作、他人事ではないという気持ち。今はまだ未来の話でもいつかは自分もこうなるかもしれないと興味のあるテーマだったので期待していたのだけど肩透かしを食った印象。扱う題材は良いと思うしもっと突っ込んだ物語が観られるかと思っていたのだが表層的で内容が薄いと感じた。映像の見せ方の工夫もあまり見えなかったかな。
その代わりというか、演者さんたちが素晴らしい。主演の倍賞千恵子さんといえば「男はつらいよ」のさくら役が代表的だと思うが、一連の作品を繰り返し見て育った自分にとって特別な人。下町の太陽と言われた彼女が高齢者役として今もなおスクリーンで演じ続けていることは感慨深かった。彼女が演じることでミチさんの人となりが伝わってくるし、清らかで美しく澄んだ歌声は切々と胸に響いた。交通整理の場面、大きな制服をまとった痩せた倍賞さんの姿は忘れられない。河合優実さんも見事だった、ずっと観ていたくなる人。出演シーンは少ないが表情や声のトーンで想いを雄弁に語ることができる稀有な才能の持ち主だと思う。
ちょっと辛口になってしまったが、早川千絵監督のテーマ選びなどにはとても共感するので次回作も観たいと思える映画でした。
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