藍紺

ファースト・カウの藍紺のレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.2
西部開拓時代のオレゴンで、はぐれ者同士の男二人が夢を追いかけ、そして駆け抜けていった軌跡。

今から二百年前の物語だけど、クッキーとキング・ルーは確かにそこにいたと思わせるリアリティ。特にジョン・マガロ演じるクッキーの人物描写が素晴らしい。泣けちゃうほど優しくて穏やかで……。オリオン・リー演じる中国人移民キング・リーと静かに築き上げる関係性は現代なら友情と呼ぶのだろうが、二人はそんなことすら意識していないんだろう。

牛乳、ドーナツ、そして牛。小道具がまたいいんだよ。私は木で出来た泡立て器にグッときてしまった。

笑っちゃったのは、仲買商たちがいる前で牛がクッキーに懐いてるシーン。ヒヤヒヤしたけど二人とも(一人と一頭か)たまらなく愛らしい。

感動すら覚える鮮烈なラスト。冒頭で種明かしは提示されていても、「ああ、そこで終わってよかった」と感じずにはいられない締めくくり。キング・ルーのクッキーに対する思いやりのようなものが伝わってくる結末に泣いた。私だけが目撃したと思わせてくれる古きアメリカで生きた男たちの物語。忘れられない作品になった。
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