【人は宝】
昔、もう20年近く前に勤務していた病院の思い出。
札幌の郊外にあるその病院は、「老人介護型医療施設」といって、病気などが理由で自宅や老人ホームなどで自立生活が出来ない方々が入院する、いわゆる「終身型の病院」だった。
半数以上の方が数年単位で入院されるその病院ではとても穏やかな時間が流れていて、気がつけば僕もあっという間に5年間もそこで勤務していた。
でも、国の医療政策は徐々に「長期療養」から「救急医療」に重きを置き始め、そのあおりで病院の経営が傾くとまではいかなくても、以前ほど「順風満帆」と言えるような状況にはなくなった。
そんな時、もし自分が経営者だったら何を考えるだろう？
やっぱり病院であれ企業であれ、一番経営に重く圧し掛かるコストは「人件費」であり、そこにメスを入れるのが一番手っ取り早いのかもしれない。
でも、その病院の院長は違った。
どんなに経営が厳しくても『人は宝』と言って最後まで人事には手を出さなかった。
ある年の忘年会。
「では最後に院長からプレゼントがあります」といって一人ひとりに手渡されたのは、「今年一年本当にありがとうございました」と院長直筆で書かれたメッセージカードが添えられた特注ワインだった。
「人を診ることは人を見ること」
大切な教えは、何も小難しい書物だけではなく案外近くにもあったんだなって気付いた。
あと、ネタばれも含むのでフィルターかけて残します。
