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マーターズのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

マーターズ(2007年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

界隈での有名作だがあまりに怖そうなのでビビって敬遠していた。今回意を決して鑑賞。やはり怖かったが、映画としての面白みともったいなさも感じた。

まずリュシーが自殺するまでの前半は、バイオレンスホラーとして文句無しの傑作。リュシーが見る幻の女は超怖いし、全体の雰囲気もめちゃくちゃ怖くて完璧。

そして中盤、アンナが地下室の女を発見する辺りから、ちょっとのめり込めなくなってくる。そもそもあの後に普通に一泊してるのが意味わからんし、母親に電話してる場合じゃないし、あの状況で地下室をグングン進んでいくのはおかしいし、あの状態の女を自分で介抱しようとするのもおかしすぎる。警察と救急車を呼ぶべきタイミングがありすぎる。

からの"謎の組織"の登場。宗教のようであり、その信者は老人ばかり。死に怯える彼らは、「死後の世界」を知るために若い女を虐待し続けている。この組織の設定自体はかなり好き。

しかし肝心の後半の展開がとても浅く、残念だった。あれだけの状態になっている女を見た後であり、一体アンナがどんな目に合わされるのかとこっちはビクビクする。ところがひたすら毎日ガタイのいい男から殴る蹴るといった普通の暴力を受けるだけ。いや勿論それだって十分に凄惨なのだが、あの女の尋常ではない様子を見ているだけに、若干肩透かし感があった。すると終盤唐突に彼女は手術台に固定され、次のシーンでは全身の皮を剥かれた状態で登場する。ここまでいってしまうと作り物感が強く、ちっとも怖くも痛々しくもない。しかも肝心の過程を一切見せないのだ。いやそりゃ見たい訳では無いが、しかしこの映画のテーマを考えたらそこは絶対に見せなければいけないのではないだろうか。

結局アンナから「死後の世界」を聞いた教祖は「疑いなさい」との言葉を遺して自殺する。意味ありげではあるが、結局丸投げであり、造り手が何も考えていないことが透けて見える。自殺するということは死後の世界は凄く良いってことになってしまうが、映画のテーマとして本当にそれで正しいのか?

エンドロールで在りし日の幸せなリュシーとアンナの映像が流れるのは非常に悪趣味で良かった。明らかに気が狂っているように見えたリュシーを信じられず、死に追いやってしまったアンナ。リュシーの言っていたことが結局正しかったというあまりに皮肉な展開自体は本当に良くできた胸糞ホラーだったのになぁ。ダメ映画ではあるものの所々に感じるセンスは素晴らしく、嫌いにはなれない作品。勿論二度と見たくはない。
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