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ダウンサイズのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

ダウンサイズ(2017年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

ポスターからずっとコメディだと思っていたので、普通に真面目なトーンの映画だったのには驚いた。

小さくなるまでの前半はとても面白かった。人間を小型化する技術の発明と、小さくなった人間のための社会が構築されたレジャーランド、そして小型化の過程など、ワクワクして見入っていた。夫婦で決意して男女別の部屋に別れ、不可逆の小型化処置を受けた後で、妻から「やっぱり無理だった」と小型化しないで自分だけ逃げ帰ったことを知らされたときの主人公の絶望感たるや。あまりに酷い仕打ち。

しかしこの映画、面白いのはそこまで。せっかくいくらでも広げられそうで可能性に満ちた設定なのに、後半はほとんどこの設定が関係ない展開ばかりが延々と続く。小型化した社会では外界と変わらず普通に貧富の差があるという展開は、発想としては悪くはないのだが、結局見せられるのは普通の社会構造であり、小型化が一切関係なくなってしまっている。

小型化によって僅かの財産でも裕福で遊び放題の暮らしが送れるようになるという最初の入口は良かったのに。ただその入口も"おいしすぎる話"なので、実際に小さくなったら絶対に裏があるものだとばかり思っていた。普通に金持ちの暮らしを満喫していてその時点でガッカリだったなぁ。それも冷静に考えれば、土地はまだしもほとんどの物品は小型化することによってコストが上がりそうだけども。ありとあらゆる物が小型化しており全く普通の暮らしが送れているというのはさすがにどうなんだ。

小さくなったことでのデメリットがまるで描かれない。もっといくらでも考え得るトラブルやハプニングがあるだろう。そこを一切無視して普通の"環境問題"や"貧富の差"などのありきたりな社会問題の話をするなら、この設定で映画を作る意味がない。

終盤は「人類が滅亡する前に地下施設へ入るかどうか」という謎の展開となり、マジでダウンサイズの話はどこに行ったんだと頭を抱えてしまった。

クリストフ・ヴァルツは相変わらず最高だった。
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