このレビューはネタバレを含みます
いわゆる「ドンデン返し」ものだが、正直先が読めてしまう。しかし映像表現がわりかし面白いので観続けることはできる。そんな作品だった。
最初は執拗に主人公につきまとう女が鬱陶しくてしょうがない。観ていて非常にイライラした。しかしウエイターが主人公のコップにしか水を注がず、その後に女が男子トイレの中まで主人公を追ってきたときに、「あぁこの女は主人公の頭の中にしかいないんだな」と感じてしまった。わざわざこんな女が出てくるということは主人公は何か病んで過去の出来事に囚われているわけで、女の話の入口からそれはおそらく殺人の話。女の具体的な話に「どうして知っている?」と主人公がこぼした時点で主人公が妻を殺したことも確定。よって、全体的にドンデン返しものの驚きとしてはかなり薄め。
ただ90分と短くまとめていて無駄がないし、セメントや水を使った映像表現やポスターは好み。主人公が女を殺すことで吹っ切れるだけというラストシーンはちょっと弱かったが。
映画で出てくるサン=テグジュペリの言葉「完璧とは、何も足せない状態ではなく何も削れない状態のことだ」は初めて知った。好きな言葉。
しかしどうしてこんな意味不明の邦題をつけたのだろうか。内容にもそぐわないし、同名の映画がすでにあるのに。もともとの「A Perfect Enemy」のままで全然良いのに。というか「完璧」も「敵」も作品の中で重要ワードとして出てくるのだから、むしろ絶対に変えてはだめだろう。"内なる敵"は己の弱さであり良心であったのだが、主人公はとうとうそれを自ら殺してしまったんだなぁ。