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胸騒ぎのしてぃぼのレビュー・感想・評価

胸騒ぎ(2022年製作の映画)
4.0
「ファニーゲーム」を超える史上最悪クラスの胸糞映画でした。厭ミスだとか、地獄だとか安易に言われる作品がありますが、嫌だという感情を超越したほぼ有害な映画。そしてこれは誇張ではないと思います。薄ら不愉快なやり取りがずっと続いた後に行き着くラストには度肝を抜かれました。

旅先で出会ったパトリック夫妻と仲良くなったビャアン・ルイーセ一家。誘いを受けたので帰国後に改めてほいほいその家にお邪魔したら、ちょっとずつその人たちの嫌なところが目についてきて…というストーリー。「気が悪くなる」シーンのオンパレード。ビーガンだと伝えていたのに初日に肉料理が振る舞われる、ルイーセがシャワーを浴びている途中で向こうの旦那が洗面台に入ってくる、都合が悪くなると自分たちが知らない言語で勝手に会話する、車内でかける曲の音量がデカ過ぎる、人の娘に勝手に説教する、自分の息子に余りにも厳しいなど。個人的には頼りなくて流されやすいビャアン、自己中心的で自分のことを棚に上げて勝手な振る舞いをするルイーセにも腹が立ちましたが、この2人の鈍感さと我儘な感じが本作を不愉快にするスパイスになっていました。ボディーブローのようにじめっとした陰湿なシーンが続いた後の驚愕のラスト。しかもただの胸糞ではなく張った伏線の回収が綺麗。パトリックの息子アーベル君は本当に先天的に舌がないのか。ヒゲの生えたおじさんは本当にベビーシッターなのか。なぜパトリックは経歴詐称をしていたのか。など。

ただ1番恐ろしかったのは完全に死と絶望を受け入れて無抵抗になる場面。娘の舌を切り取られて誘拐され茫然自失状態となり、自分たちは裸にされて石を投げられて死を待つ。こんなに恐ろしい光景はない。

旅先で出会った人には不用意に近づくなという教訓だけ学びました。97分不愉快な思いを与えられるまくりなとても稀有な映画体験でした。

ちなみに本作は監督が実際に旅行に出かけた際に仲良くなった「パトリック」夫妻に実際に声をかけられたことに着想を得たとのこと。ホンモノのパトリック夫妻少し可哀想。脚本の性質上、演者が中々見つからなかったが、最終的に本当の夫婦が引き受けてくれたらしいです。裏話が面白い📝
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