一言で言うならアメリカ人によるアメリカの映画。アカデミー賞作品賞&監督賞無縁のクリストファー・ノーランが初受賞し、その他部門も席巻したって言うのは、やっぱり米アカデミー賞は、世界で1番権威のある映画賞と言うより、米国の映画賞なんだと感じさせられた。この作品自体はオッペンハイマーの伝記映画であり、アメリカ視点だから、別にそれ自体は否定しないし、映画としての完成度は高いと思う。
でも日本人としてこの映画の見方が全然分からなかった。オッペンハイマーの苦悩というか、感じていたことを少し知れたのは良かったけど。原爆落として勝利して大歓喜！は直視できなかったし、京都は文化的価値の高い場所で新婚旅行で行って素敵な場所だったから除外するよ、みたいなシーンはグロテスクだった。
日本人がこの作品で1番注目する場面は、原爆実験〜投下までの一連だと思う。だから最後の1時間で特に取り沙汰されたストローズとの確執とか、共産主義排斥みたいなのはぶっちゃけ興味は薄れていったというか、そっちに矛先向いちゃうんだと思った。歴史としては注目度高いんだろうけど、もっとフォーカスして欲しいポイントがあった。
前評判で批判されていた通り、やっぱり被爆者を敢えて映していなかったのが気になる。オッペンハイマー視点で足元に写ったり、原爆投下から1ヶ月後の写真を直視できないみたいなシーンはあったが。「私は世界を破壊してしまった」と言う割に、実際にどんな被害があったのか、見せないのは映画として納得できないな。インタビューでも語っていたが、オッペンハイマーから見た世界を尊重したらしいんだろうけど。ノーランの息子が気候変動に比べたら、核兵器は大きな関心事ではないと言ったそう。それに危機感を覚えているのなら、尚更欲しかった。あとセックスシーンいるのかな。
もちろん良かった点も多々あって、まず音の使い方が素晴らしい。実験後に自信の功績の話になると、ホワイトアウトする演出も良い。あと役者陣が超豪華。他の人の感想も知りたくなる映画です。
