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ザ・ホエールのjjjkのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
4.0
「エゴイスト」以上に主人公がエゴイストな映画だった。チャーリーのことを共感できるか、好きになれるかは置いといて、強い感情が動いた。

まずは舞台の映画化と聞いてなるほどと思う。確かにチャーリーの家の中から話が飛び出すことはない。それなのに、退屈しないというか、ちゃんと興味が持続し続けるのが凄い。

主人公のチャーリーが、自分の姿を人におぞましいと思うか問いかけるシーンが何度かあるが、正直僕はおぞましいと思ってしまった。自分の力では立ち上がることもできず、ただただ自らの死期を早めるかのごとく貪り食う姿は、結構見ててしんどいところがある。

しかし、太っていて、一歩も動けない=怠惰、ネガティブといった先入観とはうらはらに、彼は非常に知的で、別れた妻から言われるように妙にポジティブ思考なのが面白いところ。特に、娘のエリーに向ける視線は、例えどんなひどい言葉を投げかけられようとも、彼女を信じる姿勢にブレることはない。むしろ、そんな彼がこれほどの状態になるほど、ボーイフレンドを失った喪失感がどれほどのものだったかが分かる。

今作の登場人物たちは、看護師の友人リズを除いて、エゴまみれだ。特に、娘のエリーの他者を平気で傷つけるサイコパス的行動には恐ろしさとイライラが募るが、彼女がそうなってしまった原因を作ったのがチャーリーだと思うと、彼に対して好感が抱けない。妻と娘を男を好きになったという理由で捨てたくせに、娘に過度な期待や自分が信じたい娘像を抱き続ける姿は、エゴイストのほかならない。

しかし、彼の自己中心的な愛情や気持ちが、結果として娘にとっては大きな支えになるに違いないラストは、どうしたって感動的だ。そもそも、愛とは身勝手なものなのかもしれない。その一方的な感情が誰かを救う時もあれば、苦しめるときもある。かなりズシンと重たいのに、そんな愛の前向きな側面を描いた作品だった。
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