作品のタッチはもちろん是枝監督だけど、台詞の端々に確かに坂元イズムを感じた。
予告編など、どういう作品かという全貌が伏せられている本作。まあ前情報を入れずに行った方が絶対楽しめるので、未見の方はUターン推奨。
といいつつ、前半は予告からも想像できるように、安藤サクラと永山瑛太劇場。安藤サクラの、いわゆる「普通の」母親のうまさよ。第一章のこの人の目線で見ると、マジで学校側の対応に腹が立つし、許せないってなる。
そして第二章、永山瑛太側の教師目線が始まると、あれちょっと思ってたのと違うぞってなり…。
複数人の人物からの視点から描くことで事態の全貌が明らかになるスタイルの映画なんだけど、本当に各登場人物への共感のさせ方がエグいから、それぞれの視点から見ると他者の相容れなさが本当に恐ろしく、意外にも事実は別にあるのに、ああ怪物って個人の穿った見方が生み出しているものなのかもなぁって思った。
そして、後半の子供達から描かれる事態の真相。この章がネタバレとして伏せられているところだろうから明言は避けるが、とてもグッときた。なんというか、子どもゆえの残酷さ、こういう風潮・空気を生み出してしまうのは、大人の責任なのかと色々なことを考えてしまった。多様性を謳いながら、実生活では何も価値観もアップデートされていない現実があって、それが知識もない、自分で環境を変えることもできない子供にとってはどれだけつらいことか。子ども視点から切り込んだのはなかなか珍しいのでは。
なんか色々ごまかしながら書いたけど、今作がカンヌのクィア・パルムを受賞したということから、どういったことが描かれるかはなんとなくわかる人は分かるはず。受賞した是枝監督の発言が、いろいろ賛否を生んでるみたいだけど、自分は何か特定の人に向けてテーマを絞ったわけではなく、全ての人にある他者への不寛容さに対する話だよ、ってことを言いたかったのではと思った。是枝監督の作品って、まぁこれだけ注目度も高くて、あえてちょっと神経を逆撫でするようなざらっとしたものを残すから、引っかかる部分があるのも分かるんだけど。でも、個人的に胸に響くようなシーン・展開があって、それが日本最高峰のキャスト・スタッフ陣で観れるんだから、とにかく観とかない手はないでしょ、って思う作品だった。
