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ザ・ホエールのchihoのレビュー・感想・評価

ザ・ホエール(2022年製作の映画)
3.6
情報(事情)が多く、しかも最後までまとまり切らず、おしいかんじ。
主人公と娘にフォーカスして観ると、なんとも興味深いテーマで良いのだけど。
主人公が自分が死ぬ前に一つでも良いことをしたと思いたかった、という超自分のことしか考えてない思いで娘との関わりを持ち始めていて、自分のためかい!とツッコミ入るところなのだけど、それが実は意味を持って結果娘のためにもなるというところに気づいた時、コンステレーションや〜と言う彦摩呂の声が聞こえた気がした。自分の衝動や欲求ですら、もはや自分自身とは別のところからきているのか。そして、起こらないことは案外どうやっても起こらない。最良のことも最悪のことも。
娘がおそらく母親から与えられなかった「全てを肯定する」という行為を、主人公は行った。どんなにひどいことを言って傷つけても、その態度を変えなかった。そう簡単にできることではない。たとえ自分が死ぬことをわかっていても。全てを肯定するということは、どんな自分でも存在していてよいという究極の経験となる。きっと、本当に愛しているんだ、とシーンが進むごとに観ているこっちも実感する。
この真実のやり取りがなければ、娘は母親のような人生を送っていただろう。でも最後に、きっと娘は幸せになれるだろうと誰もがわかる。娘も、観ている人も、そして誰よりも自信のなかった主人公にも、それが実感できる。
ニューライフですら、その経験あっての今なのだ。素晴らしきかな人生!なんて思えないよね。超タフだよ。でも、こんなふうにサバイブしている人はたくさんいるし、そんな人たちを私は尊敬している。
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