この映画、題材はカルト教団です。
カルトの話なんて、普通は陳腐になるのがオチだけど、これがただのカルトの話で終わらない。もっとややこしい話をしているわけです。人間が何を信じるか、なぜ信じるか、それを信じることで何を失っていくのか。誰かと一緒に正しいと思うものを信じていくことが、どれだけ怖いことかを、淡々と、じわじわと描いてる。
で、観てるこっちはそのじわじわに侵されるわけです。最初は笑えるシーンだってある。でも、いつの間にか笑えなくなってる。
特にね、あの閉じ込められた島の設定ですよ。僕たちって、何かを信じることで実は自分の世界を狭めてるんじゃないかって、そういう疑念を映画が突きつけてくるんですよ。だけど、その疑念が怖いのは、信じるものがなければ生きていけないのが人間だってこともちゃんと描かれてるからなんですよね。信じるものを持たない自由も地獄なら、信じすぎることもまた地獄だと。いや、これね、中々に深いですよ。
俳優陣もまた良い。特に主人公を演じる役者の“狂気”が、観ているこっちの皮膚の下にじわっと入ってくる。あれはね、演技じゃないんですよ。もう役が乗り移ってるというか、その人なんですね。
見てるこっちも一緒に信じたくなるし、一緒に逃げたくなる。その矛盾が、映画としてとんでもないリアリティを作ってるんです。
で、ラストのあの展開ですよ。信じることの終わりが、ああいう形で描かれるんだなと。
すごく興味深く面白いのだけれど、宗教感が揺さぶられる映画でした。
(ちなみに僕は無垢の無宗教です)