Punisher田中

ハッチング―孵化―のPunisher田中のレビュー・感想・評価

ハッチング―孵化―(2022年製作の映画)
3.8
体操を習っている12歳のティンヤは、キラキラなライフスタイルの動画配信をしている母親の期待がのしかかる生活に不満を抱えながらも期待に応えられるよう、徹底して努力の日々を過ごしている。
そんなある時、深夜に甲高い奇妙な鳥の声を聞き、ティンヤは森で奇妙な鳥の卵を見つけるのだった。
母親へ反抗するようにそれを育てようと決意するが、予想以上に卵は大きくなり、遂には孵化を始めてしまう....それが全ての始まりだった...

設定は奇抜ながらも決して設定勝負の作品ではなく、家族愛をしっかり可視化していたラストには脱帽した地獄のファミリー映画。
どんな動物も体の一部が成長する度に痛みを伴うが、正にその成長痛を今作はフェミニンなセットや彩度の高い画面構成に鮮血が時折顔を覗かせることで表現しているよう。
どんなモンスターパニックでも必ず語られる「人を食い殺すモンスターよりも本当に怖いモンスターは""欲の大きな利己的主義の人間""である」論は今作ではより強大な物になっており、序盤から人間が一番のモンスターっぷりを発揮しているのが多作品とは一線を隠していたし、だからこそモンスターと結び付けてもテーマは一切ブレずに、親が毒親でも自分を必要とし、愛されたい少女の物語に仕上がっていた。

そして、1番肝心なクリーチャーの造形やクオリティだが、個人的にはアリ...モハメド・アリ....
ストーリーが童話に近しいからか、クリーチャーの造形も破茶滅茶に童話チック。
声は煩いし、残虐な一面もあるがクリーチャーだからこその純粋さはどこか憎めないし、段々と可愛く感じできてしまうデザインは秀逸だった。
なんと、今作のクリーチャーはCGではなく、とある技術で動かしているとのこと!(詳細はパンフで見てね!スゴイヨ!)
ただ、クリーチャーがメインを張るという作品ではなく、あくまでファミリー作品なので、クリーチャー映画としての過度な期待はNG。
10代少女にのしかかる重圧や悩みの救いの無さはきっと、鑑賞者のあの頃を思い出させてくれる筈。
そんな逆「mid 90's」を今作で楽しんでみては。
個人的には地獄ファミリー作品としてかなり楽しめた一本だった。

レビューには関係ないが、今作もフォロワーさんと鑑賞させていただきました!
やっぱり鑑賞後に語り合えるっていいですね💪